夥しき秋
風がまとわりつくやうな
こゑが共鳴するやうな
激情と含羞とのしなやかな異説
その一季は
幼児の歓声を遠くで聞く思ひ出となり
思想から最も遠い寧日をもたらす
ひとときを百日紅のいろに傾け
携ふかなしみを磨き上げる
杜の奥処にうまれた風が
さかしらな空の配置をしらぬげに
頑なに身をよじる私に吹く
文字ごとに
痛苦を運ぶかのやうな
卑小な沈黙のやうな
あやふげにまたしたたかな反論
その瞬間をだう名づけるのか
ひとふりの白刃を飲みこんだ日に
金色の幸福を手に入れる夢をみる
深い真昼にまぎれてかそかなる安寧すら
使命のやうに悲しみと持ちかへる
昼ふかく
けふのかなしみ
かたはらに
そこはかとなく
翳りちかづく